コミュニケーション不全の原因
コミュニケーション不全の原因は以下のことが考えられます
【原因】
- 忙しくてコミュニケーションがとれない
- 「コミュニケーションは大切だ!」という意識にある問題
- 心理的安全性
- アンコンシャス・バイアス
目次
1.忙しくてコミュニケーションがとれない
コミュ二―ケーション不全の原因を挙げてください・・・と言うと必ず出てくる原因です。しかし、本来は、「忙しくてコミュニケーションがとれない」のではなく、「コミュニケーションをとらないから忙しくなるい」と考えるべきです。そのためには、個人のコミュニケーションスキルを向上させることも重要ですが、組織においてコミュニケーションの「仕掛け」と「仕組み」で改善していくことが重要になります。
コミュニケーション不全を防ぐ「仕掛け」と「仕組み」
「仕掛け」と「仕組み」という言葉があります。「仕掛け」とは「他人に対する働きかけ」、「仕組み」とは「意識せずともそうならざるを得ない、そうせざるを得ない構造」のことです。コミュニケーション不全を防ぐには、どんな「仕掛け」や「仕組み」が必要なのでしょうか?
コミュニケーション不全を防ぐ「仕掛け」
ここで言う「仕掛け」とは、「他人に対しての働きかけの癖」のことです。みなさん、“無くて七癖“という言葉を、耳にされたことがあると思います。
人は気が付かないようで実は色々な癖を持っているもの…これが“無くて七癖“です。以下に述べることを口癖、行動癖…つまり習慣にして、コミュニケーション不全を防ぎたいものです。下記で出来ていることは継続し、出来ていないことは改善をすることが必要です。
- マナーに拘り過ぎない
“挨拶は目下の者から”などのマナーに拘って黙っていると、相手からは“話しにくい人”とみられてしまうかもしれません。「おはよう」「最近、どう?」など、挨拶は、あなたからしましょう。報告・連絡・相談・を受けるタイミングを失わないためにも、自分から声を掛ける習慣を付けましょう。 - 代替え案を示す
相手から、報告・連絡・相談を受けるタイミングを、自ら逸しないようにしましょう。「わかるけど、声かけて時間を取られるのがね…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。そういう時は、「今は忙しい」とはっきり言い、「10分後に10分位なら時間が取れる」と代替え案を出しましょう。これでタイミングを逸せず、かつ自分の時間も確保できます。 - 傾聴の4原則
この原則を習慣にするかしないかで、コミュニケーションの質が違ってしまいます。「頷く癖」「目を見て聞く癖」「相槌を入れる癖」「感嘆を入れる癖」これらをタイミングよく混ぜて相手の話を聴きます。オンラインにおけるコミュニケーションでは特にこれが重要です。 - 主人公意識
さらにコミュニケーションの“質”を良くするには、「この件はあなたが一番理解しているから」と、相手に当事者意識を持ってもらう口癖が必要です。照れずに、伝えましょう。「主体性」のある発言、アクションが期待できます。 - 自分の弱点をさらけ出す
「完璧な人」に見える相手は、誰でも近寄り難さを、感じてしまうものです。普段から、「困ったところを周囲に見せる」習慣があれば、「助けてあげよう」という気持ちから、「どうかしましたか?」と、相手から話しかけてくれることも多くなります。 - 手く行った原因を聴く
「コツは何だったの?」・・・たいていの人は、この質問をされて悪い気はしません。相手の成長も促せますし、年上の先輩などを使わなければいけない時には、ギクシャクしていたコミュニケーションも、これでうまくいったりします。 - ざっくばらんに
「ざっくばらん」とは、「遠慮がなく率直なさま。もったいぶったところがなく、素直に心情を表すさま」のことです。時計見て、相手の目を見て、また時計見て相手の目を見て…ってやるよりも、「間に合う?」「大丈夫?」と、率直に話し掛けるのが「ざっくばらん」です。そうでないと、周囲は「何を考えているかわからない人」と思い、話し掛けづらくなってしまいます。 - 罪を憎んで人を憎まず
職場ではよく、「叱り方を間違えてからコミュニケーションが滞る」ということが良くあります。同じ叱るなら、「〇〇さんらしくないよ!」と叱りましょう。「見捨てられた」「存在そのものを否定された」と思われたら、あなたと、口をきくのも嫌になってしまうものです。
コミュニケーション不全を防ぐ「仕組み」
「ゴミ箱に落下音をつけたらゴミの回収量が2倍になる」
「歩くと音がなるピアノ階段の設置により、エスカレーターではなく階段をつかう人が1.6倍になる」
など、「仕組み」により人の行動を変えよう!という実験が、現在盛んに行われてきています。以下のような仕組みで、コミュニケーション不全を防ぐことが可能です。
- 計画を知り、計画を知らせる
計画は「計書く」であって「計書かない」ではないですから、「頭には計画がある」という言い方は間違いで、これは“妄想”と言います。紙であろうが、電子文字であろうが、きちんと書いて、それで初めて計画となります。
お互いの計画が分かっていれば、コミュニケーションの半分は上手くいったも同然です。互いに計画を知らないので、誤解や曲解、あるいは「お互いこんな忙しいときに会議、ミーティングなんて…」と思ってしまう。今はグループウェア等も豊富にあり計画の共有が簡単に出来ますが、こういった認識を皆がきちんと持って入力し開示すれば、コミュニケーションは自然と改善されます。 - 情報を公開する
「情報を公開したら組織が不活発になった」・・・という話はあまり聞いたことがありません。もちろん、公開しない情報もあるはずですが、大抵のことはオープンにする方が良いのです。
個人がパソコンで仕事をするという事が、ファイルが個人のパソコンに格納され、色々な事がクローズになっていく原因かもしれません。初めからファイルの格納先を、みんなが覗ける場所にしておけば、そういった心配もありません。「会社の中で秘密にしておくようなことはない。すべてを全社員に公開する」こういった仕組みが組織にあれば、コミュニケーション不全は、減ります。 - 通知
通知と言うと、アラ―ムやプッシュ通知など、ITのそれを思い浮かべる方が多いと思います。ここでいう「通知」とは、「リスク回避の仕組み」のことです。例えば、仕事には納期がありますが、「明日ですよ!納期は!」と言っても、また納期を過ぎてから“嘆き”を知らせても無駄です。
3段階で納期の通知をする仕組み(例:2週間前・1週間前・前日)を作るなどして、コミュニケーションを図るのです。通知をきっかけにお互いの状態を知らせ合うことを促すのです。納期だけではありません。会議開催の通知なども同じです。1回だけ通知するのでなく、段階的に通知することでコミュニケーション不全を防ぐことが出来ます。 - 相手の行動習慣を知りそれに合わせる
いくら忙しくても相手も人間です。人間であれば、必ず腹も空くし、疲れも出ます。どんなに忙しくても、仕事のみしている人はいません。ですから休憩や食事の時間を、必ずどこかで取ります。
他にも、電車に乗っている時間、駅から会社に歩いてくる時間、つまり、「仕事をしていない時間)が全くない人はいないのです。ですから、相手をよく観察しましょう。必ず空き時間があります。「あの人と忙しくてコミュニケーションが取れない」というのは、単なる言い訳に過ぎないのです。 - 話す前に書く、書いたもので話す
せっかくコミュニケーションの機会を持っても、相手に「何を言っているのか分からない」と思われたら元も子もありません。だれでもスピーチを終えた後や面接の後に、「あれが抜けた」「思ったよりも時間が無くて早口になってしまった」など後悔した経験があるはずです。メモで良いので話す前に「原稿」を書き、それで「話す」という仕組みを作ることが大切です。 - 社内をブラブラする
自席に座りっ放しですと、「健康」だけでなく、「コミュニケーション」まで失うことがあります。相手の事を知る方法は、直接話すことだけではありません。他部門へ行って、その相手の事について、別の人から情報を仕入れることも出来ます。「うちの〇〇さんは最近どうですか?」この一言で、相手の事が直接本人と話さなくても、理解できることが多いのです。
2.「コミュニケーションは大切だ!」という意識の裏にある問題
コミュニケーションの問題は、「コミュニケーションスキル」や「仕組み」を見直すよりも、「職場の信頼関係」等の、コミュニケーション以外の問題を解決する方が、改善の効果が高いことがしばしばあります。「コミュニケーションは大切!」と叫ぶ人の心の中にある、コミュニケーションへの誤った解釈が、コミュニケーションを悪くしていることが多いのです。
「働き方の多様化」が加速している
「リモートワーク」「ダイバシティ」「価値観の多様化」などが、組織内で一気に進んでいます。
「全員大卒」「全員男」「全員出社」「全員9時~17時勤務」などが、次々と崩壊しているのですから、今までのように、「ツーカー」「目を見れば分かる」「一を聞いて十を知れ」的なコミュニケーションで、組織が連携し、結集することなど、夢のまた夢です。コミュニケーションそのものへの考え方ややり方を見直さないといけません。にもかかわらず、口では「これからの時代コミュニケーションがより大切になる!」と口では言いながら、相変わらず、
- 肝心なことが伝わってこない
- 要らないことばかり伝わってくる
- 無駄な会議やミーティングが継続される
など、一向に、職場のコミュニケーションが改善されないのはなぜなのでしょう。それは、「コミュニケーションは大切だ」と連呼している本人や組織に、当事者ですら気が付いていない意外な問題があるからなのです。
コミュニケーションを重視する人や組織が抱えている問題とは何か?
実は、どんなに働き方の多様化が進むから、コミュニケーションは重要になると思っていても、以下のような問題を解決しないと、コミュニケーションの取り方は、まったく変わりません。
- 上司が自分の仕事を管理できていない
「自分が部下に要求したこと」をコロッと忘れてしまう。それを良いことに部下は、要求されたことは横に置いて報告をする。しかし、突然上司は自分が要求した内容を思い出し、「あれはどうなった?」「これはどうなった?」と聞き始める。そこで予定外の報告が増え、ミーティングが長引く。部下がうんざりする。しかし、その突然思い出した要求もまた忘れてしまうので、また部下は最低限の報告しかしない。そこでまた「例の件はどうなった?」と始まる…こんな悪循環に陥っている。 - 社員の多くが自律的な行動を「悪いこと」と受け止めている
とにかく、「コミュニケーションを取る事は良い事だ!」と信じているので、特定の人で何かを決定したりすると、「勝手に決めやがって!」「私はそんなの聞いていない」と文句を言う。
だから、それが嫌で何でもかんでも、「共有」だ「シェア」だと言って、情報を流す・・・だから、「いちいち見るのも大変なのでスルーしている」という人が多い。 - メール軽視
「CCで来たメールは見ません」「見落としていました。すみません」と平気で言う。自分が最後まで読んでいないことが原因で事故が起きたのに「メールだけで理解できる訳ない!こっちがちゃんとわかるようにちゃんと説明しろ!」と逆切れする。・・・このようなことから、単なる説明のための「Face to Faceのミーティング」がやたらと多くなっていませんか? - 何の根拠もなく「定期的な会議だから・・・」と開催し続ける
「四半期に1回は全員でミーティングをする事になっている」等、「決めたことだから」と必ず開催する定期会議。議題も無理やり作ったものが多い。・・・だから参加者は白けて、会議中、「内職」をしている人も多い。 - 「会議が多い=ダメな会社」という自覚がない
組織の中に「委員会」とか「プロジェクト」のような組織がたくさんある・・・「うちは、会議で詰めないと、皆が行動を変えないから」などと周囲で言っているのをよく耳にする。 - 「決断が遅い会社だ」という自覚がない
会議開催日まで「問題を指摘する」のを先送りしてませんか? - 勉強会が多く疲弊している
数が多いだけでなく、会社や上司主催で強制参加。・・・受け身になり、あまり勉強になっていない - 「ミーティングは少ない方が良い」と言いつつミーティングをすぐしたがる。
「勝手に決めるとスネル人が出るから」「部下の仕事がわからないから」「モチベーションが心配だから」など、相手の不安解消のために自分が呼ばれる。・・・こんな不合理につき合わされ、嫌々コミュニケーションをしている
コミュニケーションの問題はスキルや仕組みの改善だけでは解決できない
「コミュニケーションが大切だ」と言っている人や組織が抱えている問題を上記に挙げました。多くの会社が、コミュニケーションに問題があると、「コミュニケ―ションスキル」や「コミュニケーションの仕組み」を改善すれば良くなると考えて手を打ちます。しかし実際は、上記のような、コミュニケーションのスキルや仕組み以外のところにある問題を解決しないと、コミュニケーションが良くならないのです。
「1on1ミーティング」を導入している会社でも、「普段から信頼をされていない上司は、どんなに対話のスキルを屈指しても、部下の本音を聞き出せない」という報告が多くの会社から上がってきています。これも対話やその仕組みの改善では解決できない問題が放置されていることで、コミュニケーションがうまくいかないという事実を示していると思います。
「そのものを狙うな!」がコミュニケーションの問題を解決するポイント
「そのものを狙わない」・・・これは、コミュニケーションスキル、コミュニケーションの仕組みの見直しは大切ですが、以下のようなそれ以外の問題解決の方が、コミュニケーション改善の効果が高いという意味です。その観点で、以下に研修やコンサルティングの現場で、比較的改善効果の高かった問題解決策を挙げます。
- 自分の「仕事の管理」、特に「納期管理」が出来ているか?
「メール既にもらっていたのならごめんなさい」「失念していましたごめんなさい」などと「ごめんなさい」が口癖になり、忙しいからと、自分を甘やかしている人がいます。相手から信用がなければコミュニケーションがどうなるか・・・お分かりいただけると思います。 - 定期的な会議の中止、短縮化、簡素化そして、廃止を恐れない
全員を集める必要があるのか?「議題を無理に作っていないか?・・・しかし、その前に会社や部門の戦略や方針は共有されていますか?されていれば全員集合の会議はそれほどいらないはずです。 - 「億劫だ」と思わずに、今以上に、もっと上司への報告をする
報告でなくても、もっと上司に話しかける、雑談する・・・これだけでもきっと「ミーティングが減る」と思います。 - 不必要なことまで共有しない
関係ない人にまで「メールのCC」を入れない・・・そうしたいのですが、そもそも「変化が及ぼす影響の範囲」というのを各自が分かっているでしょうか?「誰がどういう仕事をしているのか?それはいつまでか?」を共有していることが先決です。 - 自分をレベルアップするには何をどうすればいいのか?を知っている
勉強は自ら進んでするものです。勉強会があるから勉強するのではありません。しかし、そのためには自分に必要な知識や技術が分かっていなければなりません。 - 困ったときの「相談窓口」を設ける
普段の生活でも困ったことがあったとき、「コールセンター」や「相談窓口」があって助かった・・・という経験をされたことがあると思います。しかし、職場では相手の忙しさを考慮し過ぎて、こういった連絡をためらってしまうことがひじょうに多くあります。このような相談窓口が職場にもあれば、気兼ねせず、かつ次の「会議」まで待たぬとも連絡や相談ができます。
3.心理的安全性
「心理的安全性重視は職場の仲良しクラブ化につながる」という警告をする人がいます。雰囲気が快適になり、現状維持ムードに流れる・・・と。心理的安全性のある「互いを認め合う暖かい雰囲気」と「アサーティブなコミュニケーションで時には率直な指摘もする厳しさ」を組合わせてこそ、「学習する組織」を実現することができます。
心理的安全性とは何か
心理的安全性(Psychological Safety:サイコロジカル・セーフティ)は、心理学用語で、「チームメンバーの一人ひとりが、そのチームに対し、遠慮なく発言できる、自分をさらけ出せると感じられるような、空気があるかないかという意味の言葉です。
Googleが、2016年に、「他者への同情、あるいは配慮や共感といった、メンタルな要素を担保することが、チームの生産性向上のポイントである」と発表したことで、注目を集めた言葉でもあります。
心理的安全性の研究の歴史は約50年間にもおよぶ
50年間の中で、特に注目された研究結果は、1999年に、ハーバード大学のエドモンドソンが発表した「チームの心理的安全性は、チームの中でリスクをとっても大丈夫だという、チームメンバーに共有される信念のことである」というものです。彼女は「組織論の権威者」と言われますが、研究の中で
- チームの心理的安全性が、チームの学習を促しチームのパフォーマンスを向上させる(1999年)
- 業績を上げるには、チームメンバーの有能感(効力感)よりも、心理的安全性が重要である。そのためにはリーダーのサーバント型(支援型)のリーダーシップが必要である」(2011年)
と述べていています。
このように、「心理的安全性」は、業績を上げるには、「チームが学習すること大切である」という組織学習論と並び、重要視されています。
今、心理的安全性が再び着目されているのはなぜか?
その理由は、一言で言うと、
過去の成功事例や、マニュアル通りにやっても成果が出にくい
という時代環境だからと言えます。
先行き不透明かつ困難なチャレンジが求められる今、チームや組織は失敗や成功から、大いに、学習をする必要があります。しかしそんな時、チームの空気が「うっかりそんなことを言ったら大変なことになる」「本音など言えない」というようなものでは、チームの学習は促進されません。
だからこそ今、チームや組織に、心理的安全性があるかないかが、ひじょうに重要だと言われているのです。
心理的安全性とともに着目されるアサーティブネス
「アサーティブネス」とは、「相手と対等にかつ率直で誠実なコミュニケーションを図る」という考え方のことです。
アサーティブネス(Assertiveness)は、直訳すると「自分の意見を断言する(押し通す)」という意味になりますが、そうではなく「自分の気持ちや考えを、相手の立場や考え方を尊重しつつ、相手の権利を侵すことなく、率直に伝えること」を意味しています。
アサーティブネスは、欧米を中心に1970年代における人権擁護の思想や女性解放運動の中から生まれてきたものです。それまで自分のことは後にして、誰かのために生きてきた女性たちが、自分のことは自分で決める、自分自身のために生きるということを選択し始めたことが、その始まりだと言われています。
例えば、
- 「上司のあなたがそうだから皆意見が言えない」ではなく「私がもっと若いメンバーを引っ張るので、助言をください」と上司に言う
- 部下に「ちゃんと報告しろ」ではなく「報告は3日後の16:00に。レポートを付けて」と言う
- 部下に「今は無理!」ではなく「今は無理だけど、明日14:00からなら時間がある」
などと言うことを、各人が心がけるというのが、アサーティブなコミュニケーションです。
多くの人が心理的安全性に注目するのは、それだけ、心理的安全性の無い職場が多いからではないでしょうか。そんな職場においても、まず一人一人が、アサーティブなコミュニケーションに変えていくことで、チームに信用や信頼感が芽生え、やがてチームに心理的安全性が出来てきます。実際に、チームの各人がアサーティブなコミュニケーションに変えることで、チームの雰囲気が変わった例が多く存在しているため、アサーティブなコミュニケーションが今、着目されてます。
4.アンコンシャス・バイアス
自分自身の、そして組織間に生じるアンコンシャス・バイアスに気づき、改善すれば個人も組織にも、良いつながりが出来ます。そのためにも、ひとり一人が、自分の言動を振り返る機会を増やしていくことが大切です。
アンコンシャス・バイアスとは
人が無意識のうちに持つ固定観念であり、性別、年齢などを根拠に、物事を無意識に決めつけてしまうことです。自分自身で、自分のアンコンシャス・バイアスに気づいていないケースがほとんどだと言われます。また、過去の経験や習慣、周囲の環境などから身につくものだとも言われています。
アンコンシャス・バイアスは米国シリコンバレーで、2000年頃に生まれた概念だと言われ、2018年にスターバックスが、その店内で発生した、無意識の人種差別に対するデモへの対処として、全米の店舗を閉店し、「アンコンシャス・バイアス研修」を行ったこともありました。
アンコンシャス・バイアスには、例えば、
- 男性は車の運転がうまい
- 若い人は発想が新鮮
- 女性だから出しゃばらないほうがいい
- 小さい子がいる家庭を持つ社員はなるべく負担を減らしてあげたほうがいい
- 自分と同じやり方をすれば、彼女も結果を出せる
- 経験の少ない彼には無理だろう
などというように、様々なものが日常的に存在します。
アンコンシャス・バイアスが及ぼす影響
アンコンシャス・バイアスは日常の言動となって表れ、相手の心に作用することで、職場の人間関係や能力発揮を悪化させることがあります。
また、採用・評価・育成などの人材マネジメントや、経営幹部やリーダーの意思決定、行動の選択にも影響を与え、様々な問題を引き起こす恐れがあります。
さらに昨今のように多様な価値観やライフスタイル、属性の人が働く職場では、学歴や年齢、役職などにおいて、その多数派が「力」を持ち、アンコンシャス・バイアスによる言動で、少数派社員の言動を抑え込んでしまったり、「少数派なので、組織から、大切に扱われていない」という感覚を、少数派に持たせてしまったりすることで、職場の心理的安全性を脅かしていることも、珍しくありません
アンコンシャス・バイアスは必ずしも悪いものばかりではない
例えば、先述の「小さい子がいる家庭を持つ社員はなるべく負担を減らしてあげたほうがいい」というアンコンシャス・バイアスにおいては、その社員が周りから、「小さな子供がいるから、地方出張は他の人に頼むね。」と言われた時に、「初めてのタスクだから、きちんと責任をもってしたいのに・・・」と言われたときに、失望する社員もいますが、逆に、「良かった!今は子供と少しでも一緒にいてあげたいから」と思う人もいます。
このケースのように「ありがたい」という好反応が返ってくるケースもあるのが、アンコンシャス・バイアスなのです。
また、「バイアス」という言葉の意味は「深信」であり、その根拠となるのが、固定概念や思い込みです。アンコンシャス・バイアスがあるからこそ、不可能と思われることにチャレンジし、時に危険から身を守ることも、可能になるのです。
自分のアンコンシャス・バイアスに気づくための方法として、「アンコンシャス・バイアスチェック」や「アンコンシャス・バイアス研修」というものがあります。これらは、対人関係や組織においてアンコンシャス・バイアスの悪影響を断つためには非常に大切です。
ただ、その「気づき」によりコミュニケーションが悪くなるのではなく、良くなり、組織の心理的安全性や創造性発揮などにつがることが大切です。アンコンシャス・バイアスを「悪いもの」と決めつけず、「誰もがもっているもの」とし、その上で、どうしたら良いかを考えることが重要です。
アンコンシャス・バイアスへの対策
アンコンシャス・バイアスは「無意識」に、咄嗟に相手を不快にさせる言動となって現われてしまうことが多いもの。しかし、人間が生きていく過程で、決して皆無には出来ないものです。
従ってその対策としては、
「相手を傷つけてしまったな」と思った時、その原因となった自分のアンコンシャス・バイアスをメモしておく
メモすることにより、自分のもっているアンコンシャス・バイアスや、その傾向をはっきりと自覚でき、普段から意識できます。
組織間のアンコンシャス・バイアスに気づくためにワークショップを行う
例えば、「しょせん営業部隊は・・・」「どうせ開発にはわかりっこない」という部門間でのアンコンシャス・バイアスを、ワークショップで、ホワイトボード上に書き出してみるというものです。
部門同士が、共通目標に向かうには「情報共有」が大切ですが、アンコンシャス・バイアスがあるままでは情報もきちんと共有できません。
経営幹部間でもワークショップを行ってみる
部門間と同じで、やってみると互いのアンコシャス・バイアスが理解できます。同時に、組織に存在するAIやBI、HRテックなどがもたらす、経営データの受け取り方が変わり、打ち手が変わってきます。
相手に不快な思いをさせたと感じたらすぐに謝罪する
自分に、色々なアンコンシャス・バイアスがあると認識していても、無意識にその影響で、厳しい言動をとってしまい、相手を不快な気持ちにさせてしまうことがあります。
その際、その相手が「今のあなたの言動は不快だ」と、口に出していうことは皆無です。それは、むしろ相手の表情や声のトーン、リアクションに現れます。その変化を見逃さず、「自分の思い込みから不適切な発言をしてしまった。すまない。」とすぐに謝罪をすることが大切です。そして、その後に「期待」や「感謝の気持ち」を伝えましょう。言ってしまったことは、仕方がないので、その後にどう対処するかの方が大切なのです。