戦略実行力

戦略実行力とは何か?③
~「意志力の管理が上手」≒「戦略実行力がある」~

戦略実行力とは、メンバーが「意志力」を上手に管理でき、そして「意志力」を自分で「鍛錬」するがことが出来るということとイコールです。意志力に支えられたセルフコントロールが日常の戦略実行を担保します。

  1. 「セルフコントロール」を支える「意志力」で戦略実行を促進する
  2. 自分の中の「二面性」をコントロール出来るかが戦略実行のカギ
  3. 自分の「意志力」の使い方次第で自分の戦略実行力が決まる
  4. 自分の「意志力」を上手に管理して戦略の実行力を高める
  5. 「マインドフルネス」ブームの背景に戦略の実行を確実に成し遂げたいという思いあり

「セルフコントロール」を支える「意志力」で戦略実行を促進する

組織においての「戦略」や「方針」は「緊急ではないが重要な仕事」です。しかし、我々は目先の「緊急で重要な仕事」や「重要ではないが緊急の仕事」を優先して、「戦略」や「方針」の「実行」をつい先延ばしにしてしまいます。この原因は、自分の「セルフコントロール(自己管理)」の未熟さにあります。さらに言えば、「セルフコントロール」に必要な、「意志力」活用も未熟であると言えます。

自分の中の「二面性」をコントロール出来るかが戦略実行のカギ

ここで言う自分の中の「二面性」とは、「現在の利益を重視する自分」と「将来の利益を重視する自分」の2つが、自分の内面には存在するという意味です。

例えば、戦略を実行するための「計画」を立てている時は、「将来の利益を重視する自分」がメインになって、自分でも驚くほど、立派な計画を立てますが、「実行」の段階になると、「現在の利益を重視する自分」がメインになって、戦略の実行を先延ばしにしてしまう・・・。

このように、私たちはこの「二面性」の存在を、私たちは体験的に既に知っているのです。

「セルフコントロール」とは、「将来の利益を重視する自分」と「現在の利益を重視する自分」が対立する中で、戦略の実行を、「ドタキャン」することなく、きちんと実行することを言います。まさに、「セルフコントロール無くして戦略の実行無し」です。

自分の「意志力」の使い方次第で自分の戦略実行力が決まる

「セルフコントロール」に不可欠なのが、「意志力」です。「意志力」は科学的な実験によって証明されている、脳科学的な根拠を持つ、実体のある能力です。

「意志力」は業務だけでなく、人間関係の維持、ルールの順守や節制など、1日の中でも様々なことに使用されている能力です。ただし、この能力は、重要な仕事やトラブル解決などに取り組むと、かなりの量が消費され、使い方によっては、「枯渇」してしまう、いわば有限な能力でもあります。「今日は面倒くさいので風呂に入らない」「やめていた喫煙を再開してしまう」など、「意志力枯渇」の瞬間も私たちは体験的に知っています。

戦略の実行という、「セルフコントロール」が必要な時に、限りある「意志力」が、既にかなり消費されていて十分に配分されない、あるいは、既に「枯渇」していては、「目先の業務へ取り組む」という誘惑に負けて、戦略の実行はされないことになってしまうのです。

ところで、実は、私たちは、無意識のうちに、「意志力」の節約や配分を行っていることは、ご存知でしょうか?

「夏休み」で仕事への「英気を養う」というのは、「意志力」の節約そのものです。また、会社帰りや打ち上げでの飲み会も、「意志力の配分」の最たる例です。「100%無礼講」という訳にはいきませんが、仕事よりもかなり少ない「意志力」の配分で済むはずです。また、何かに集中していると、部屋のちらかりや身だしなみが乱れたままになっているのも、同じ原理です。

このように、自分の「意志力」の節約や配分については、「言われてみればそうだな」という方が多いと思います。そして、こういった自覚がない人が、よくやってしまうのが、「三日坊主」というものです。「意志力」の無駄遣いが多く、すぐに「意志力」を枯渇させてしまう人が、やらかしてしまうことなのです。

ですから、「私は意志が弱い」と自分を責める(結局は責めきれず周りのせいにしていることが多いですが・・・)よりも、自分の「意志力」の節約や配分を、意識して行うことの方が、戦略の実行にはよほど大切なことなのです。

自分の「意志力」を上手に管理して戦略の実行力を高める

自分の「意志力」を管理するために、知っておきたいことが2つあります。

  • 「飛び込みの仕事」など、予定外の「セルフコントロール」の必要なことが起きると、計画外のことに「意志力」が消耗され、もともと配分の必要があったことに、「意志力」が使用できず、結果より大きな「意志力」を消耗する。

  • 「意志力」を消耗しなくてもできること(ルーティンワーク)を増やせば、「意志力」を節約できる。この上限(ここからは先は「意志力」が要るというレベルのこと)は、個人差があるが、「反復学習」や「習慣化」により、引き上げられる。

この2つの事実を活用して、自分の「意志力」を管理し、戦略の実行力を上げるには以下のようなことを実践することが大切となってきます。

  1. 戦略を自分事(自分にとってどういう良い意味があるのか?)に落とし込む。
    受験勉強でも同じことが言えます。動機付けが自分で出来ている生徒は、高いレベルでのセルフコントロールができますが、そうでない生徒は、意志力の配分に失敗し、枯渇させ、成果を上げられません。

  2. 自分だけの戦略実行のルールを作る
    例えば、1つの戦略実行項目の納期に対して、自分なりの納期(例えば1日前には終了させる)を決め、これを習慣化します。すると、さきほど述べた自分の「上限」が引き上げられ、決めた「戦略実行項目」への「意志力」の投入が不要、つまり節約され、他の実行項目への配分が可能になります。

「マインドフルネス」ブームの背景に戦略の実行を確実に成し遂げたいという思いあり

「セルフコントロール」が必要な課題を一定期間続けると、集中力が必要な作業を、より長時間続行できることが、心理学の実験で実証されています。

また、「ダイエット」のプログラムに参加した人が、普段の食事量が減少するだけでなく、仕事面での締め切りも守れるようになったというケースもあり、いったん「意志力」が強化されると、色々な面で「セルフコントロール」が必要なことへの、実行力が改善されることが知られています。最近では、「マインドフルネス」もブームになっていますが、これは、意図的に、自分の「意志力」の鍛錬のために参加する人が多いのではないでしょうか。

戦略の実行には、「セルフコントロール」が必要です。「セルフコントロール」は、自己の「意志力」の「コントロール」と「鍛錬」がそれを支えます。戦略の自分にとっての意義に基づき、1つの戦略実行項目を「習慣化」することで、「意志力」の消費が節約され、これを繰り返すことで、「意志力」が鍛錬され、より高いレベルでの戦略実行のための「セルフコントロール」が可能になります。

<参考文献>
・「自滅する選択 先延ばしで公開しないための新しい経済学」池田新介 東洋経済新報社
・「身近な疑問が解ける経済学」日本経済新聞社[編]

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