評価制度

これからの評価制度の課題④
~「改悪」にならないために「評価」そのものへのポリシーを明確にする~

「そもそも人が人に点数をつけるなどおこがましい」などと、「人事評価」そのものへ考え方が揺らいでいると、どんなに素晴らしい評価制度を導入しても、それが人材マネジメントには活かされません。経営環境の変化に対して、評価制度を上手に変え、適応させることが出来るのは、変えてはならない人事評価に対するポリシーをしっかり持っているからに他なりません。

  1. 評価制度の改定を行う企業が増えている
  2. 「真の柔軟さ」がある企業や人は逆に「強固な考え方」を持っている
  3. 「人が人に点数をつけること」についてのポリシー
  4. もっと単純に「どれだけ売ったか?」で評価すれば良いじゃないか!
  5. 忙しくて部下といちいち面談などしていられない!

1.評価制度の改定を行う企業が増えている

変化の激しい時代、会社の戦略も変わり、求められる人の能力、技術、行動も変わらないといけない・・・という事から、それを後押しする人事制度の改訂を考えている企業、また改定中の企業が多くなっています。

過去、バブル崩壊後に「評価制度改定ブーム」がありましたが、今は、同じブームでも当時とは違い、新しい人事あり方や評価のノウハウも生まれてきています。「戦略的人事」「アジャイル型」「HRテック」「ノーレイティング」などの言葉を目にされた方も多いのではないでしょうか。

そもそも、評価制度は、企業の業績向上のための人材マネジメントを、的確に行うための道具であり、その業績向上のため必要な人材マネジメントというのは、当然各社違います。ですから必ずしも「最新の考え方」「多くの会社が取り入れているノウハウ」が自社に合うとは限りません。

「評価制度に解答無し」・・・「釈迦に説法」かもしれませんが、評価制度というのは自社に最適なものを構築する以外にベストな方法がない事は、今後、いつの時代になっても変わらないと思います。

ですから、今のような変化の激しい時代、「環境の変化に適応しよう」「もっと柔軟に考えよう」ということから、「自社に最適な」という点を忘れて、「流行しているノウハウ」「最新のノウハウ」(これらはたいてい「環境変化の激しい時代に最適な」というラベルがついている)を評価制度に採用してしまい、制度の改善どころか改悪になってしまうことだけは、ぜひ避けたいものです。

2.「真の柔軟さ」がある企業や人は逆に「強固な考え方」を持っている

一見すると、相反するこの「柔軟」と「強固」ですが、実は「芯がしっかりした企業や人ほど柔軟性も高い」ということをご存知でしょうか?
価値観や行動の基準となる考え方がしっかりしていると…

  1. 「良い」又は「正しい」と思うものを素直に受け容れられる。
  2. 1.の決断が早い。
  3. 拠り所があるので変化を恐れない
  4. 自分のスタンスが明確なので相手のスタンスとの違いがよく理解できる

どうでしょうか?ちなみに、この逆であると、何が良いか悪いかの判断に常に迷い、変化を恐れ、周囲の理解が出来ず、柔軟性に欠け、硬直していく・・・はずです。

変化が当たり前の時代、業績も常に好調とは言えず、戦略も変えていかなければなりません。それを支える人事マネジメントもそれらに適合させていく、だからそれを促進する評価制度も柔軟に改定していかなければならない。しかし、柔軟さにおいて最も大切なのは、しっかりとした「評価への考え方(ポリシー)」を持つことなのです。

また、人や組織が「しっかりとしたポリシーを持っている」というのは、言い換えると、「自身を肯定している」と言えます。しかし自身を肯定できているからこそ、逆に自身を否定することも出来るのです。これが人や組織が持つ真の柔軟さだと思います。

評価制度の中でも、人材のマネジメントの要になる人事評価について、しっかりとしたポリシーがあるかどうか?」が評価制度を見直す際の重要なカギとなるのです。

3.「人が人に点数をつけること」についてのポリシー

「人が人に点数をつけるなど不遜なことだ」と思っている人は結構いるのではないでしょうか?

管理職であれば、「評価面談」の場で部下から自分が付けた評語や評価点について散々文句を言われ、納得が得られなかった時に、あるいは、納得できなかった部下自身もこのように思うのかもしれません。

なぜこのような考え方が生まれてしまうのかというと、それは管理職、また部下自身も「なぜ人事評価をするのか?」ということが理解出来ていないからです。人事評価は「文句ばかりのうるさい部下を納得させるために行う」のではなく、また「誰も逆らえない『神』になって審判を下すために行う」でもありません。

企業が業績を上げ続けるために、その人材のマネジメントが必須で、それをよりしっかり行っていくために人事評価を行っているのです。

自分が誰からも敬まわれる絶対的な神であろうがなかろうが、人事評価することが好きであろうが嫌いであろうが、企業を存続するために必要だから行っているのです。こうしたしっかりとした考え方を会社や管理職が持っていなければ、どんな評価制度を導入しても、人材マネジメントには役立ちません。

4.もっと単純に「どれだけ売ったか?」で評価すれば良いじゃないか!

「どれだけ売ったか?」これを期のスタートに目標として決め、それを達成できたか?あるいは、達成度合いが「110%ならS評価」などと最初に決めておいて、期末に売上高を測定すれば、自動的に評価が決まる。そうすれば人事評価の手間もかからず、納得感も高い。非営業部門もその目標を数値化して、その達成度で評価がどうなるかを事前に決めて期をスタートすれば営業部門と同じで、納得感も高いし、手間もかからない・・・このように考える人が多くいます。

このような人たちが、そう思ってしまうのは、「要するに結果が大切。結果を評価で最重要視するのが成果主義でしょ!」という誤解をしているからです。成果主義の本質は「評価事実重視の姿勢」であり「業績との連動をしっかり見ていく」という考え方にあります。

また、より高い売上高や利益を達成するには、より大きな努力や工夫、チャレンジが必要です。これらの努力、工夫、チャレンジをより促進するのが人材マネジメントであり、その人材マネジメントを支えているのが人事評価です。

結果の大小等で「メリハリ」を付けるというのは人事制度全般で大切なことですが、人事評価で結果ばかり見ているのでは明日に向かった、チャレンジ、工夫、努力が見過ごされ、明日の企業の存続が危ぶまれます。例え、評価結果の説得が難しかろうが、手間がかかろうが、結果だけでなく、その理由(プロセス)まで評価しなければいけないことは企業の存続上当たり前の事なのです。

このようなポリシーをしっかり持っていないと、より簡単で、より納得感の得られる評価制度を導入することが最大の目的になり、企業の存続に貢献するような評価制度を導入することが困難となります。

5.忙しくて部下といちいち面談などしていられない!

多くの人事コンサルタントや評価者研修において、

  • 部下に対しての評価は客観的であるべき

  • そのためには部下の日常の行動を良く知らなければならない

  • 部下の行動の事実を知らずに評価してしまうと部下に納得されない

  • その結果評価者への不信感まで募る

と教えています。

しかし、そのように指導される度に、現場の多くの管理者が、「そうは言うけどすべての部下の、すべての行動を把握し、それをもとに客観性のある評価をせよなんて無理に決まっている」と思うはずです。

確かに、プレイングをしながら、部下の指導や評価もしなければいけないその忙しさや、苦労は分からないこともないのですが、ここで大切なことは、こういったことを言う人ほど、「人事評価」を期末に行う単なる年中行事としか考えていないということです。

「人事評価」=「人材マネジメント」であると考えれば、期末だけでなく、日常的に、管理者自身が、人材マネジメントの責任者として、部下の行動の事実を把握し、評価し、コミュニケーションを取って、アドバイスや指導をするのは当然のことなのです。また、そういう時間が取れないというのなら、部下自身から事実をきちんと報告させるようにすれば良いのです。

このように、管理者の日常のアクションは、管理者が人事評価を単なる査定と考えているか、それとも人材マネジメントそのものだと考えているかによって、大きく変わってきます。「人事評価は人材マネジメントそのものである」という考え方をしっかり持っていないと、どんな評価制度を導入しようと、客観的な評価など出来るはずもなく、また人材マネジメントのツールとして活用されるはずもないのです。

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