SIerに不可欠な人づくり③~ C社の事例、まとめ ~
C社様は、独立系SIerで社員は950名、公共、製造、金融分野を主な顧客としています。
C社様の課題認識は、若手人材が「採れない、育たない、居つかない」の3重苦。
優秀な人材を惹きつける企業の魅力を高める必要がある。もう「社員を囲い込む」という発想は通用しないんだ!と認識すべきだ!と。
働きやすい職場づくりが、「ゆるブラック」化を招いていないか。
事務所移転、ミッション再定義、評価・報酬制度改定、1オン1制度導入など 矢継ぎ早に手を打っているが…なかなか手ごたえが・・・
このような状況の中で、社員のエンゲージメントを更に高めるためにはどうしたら良いか。
といった情況の中で、取り組みをスタートしました。
エンゲージメントの向上は「定着率の向上」に留まらず、「組織の生産性」や「イノベーションの推進」にも繋げてビジネス変革による持続的な企業価値の向上を図っていくことが重要です。
またエンゲージメントには、仕事そのものに対するものと、会社という組織に対するものとがあります。
定着率ばかりに目がいくと、右側の会社に対するエンゲージメント向上策に偏ってしまいかねません。
C社様がまず打った策、事務所移転、事業パーパスの明示、制度の改定などの策は、ほとんどが右側の施策です。ですから、エンゲージメントは、左右両方重要です。
片方だけでは、あまり効果が上がりません。
今回は、仕事そのものに対するエンゲージメント向上策について紹介します。
C社様は組織に対するエンゲージメント施策を打ちながら、左側の「仕事そのものの魅力」を感じてもらうための施策を打っていこうということになりました。
エンゲージメント向上のカギを握るのは、現場のマネジメントではありますが、エンゲージメントというのは、メンバー、特に若手社員と双方が協力して一緒により良くしくものであるという認識こそが大事だと思っています。
マネジャーは、今までのマネジメントのあり方を見直し、時代に合ったものに更新していく必要性があります。
これを、「マネジメントのあり方をアップデートする」と言っています。
一方メンバーは、仕事や職場との向き合い方をよりポジティブなものにする、ジョブクラフティングの発想を持つことが同時に必要です。
どちらかが欠けてしまっては、エンゲージメントの向上は図れないものだと、そうご理解いただければと思います。
特に、マネジメントのアップデートは急務です。
マネジメントのアップデートについてですが、今、現場で何が起きているのか、というと、
「若手の価値観」と従来の「マネジメントスタイル」がミスマッチを起こしています。どう言うことか?次の図をご覧ください。
若手の価値観の変化として、今や、転職は当たり前の時代となりました。
金銭報酬が1番に重要ではなくなっている、この仕事をしていて、自分は成長できているのかという焦りと不安、世の中、情報に溢れすぎていて、隣の芝が常に青い、芝が「青く見えることがある」のではなく、「常に青い」のです。
このような価値観の彼らに右側にあるような従来のマネジメントが通用しますかね?ということです。
数字を作るためだけの指示中心、上から下への一方通行のコミュニケーション、仕事を振触れない抱え込みのプレイングマネジャー、そうやって忙しくしているから、コミュニケーションが不足しているような状況です。
このミスマッチを放置すると、若手社員の「不安」は解消されない。若手社員の成長鈍化とマネジャーの負担が増加する。そしてマネジャーが疲弊していく。
若手社員はそんなマネジャーの姿を見て「あんな風にはなりたくない」という逆ロールモデル化に繋がってしまいます。
「不安」というのが天敵です。似たような言葉に「不満」という言葉がありますが、不満は、ガス抜きをしてあげる、仕組み改善、制度改定などの努力である程度解消はできますが、不安解消には、別のアプローチが必要です。
特に彼らが抱く不安は、(先ほど申し上げた)「成長」に対する不安です。「自分が成長できる仕事をしたい」「そういう仕事ができる会社で頑張りたい」まずもってここを満たすための取り組みを、じっくりコツコツとやっていかなくてはなりません。
C社様では、どのようなStepを踏んでいこうとしたのか、ご紹介します。
私どもがお奨めしている「エンゲージメント向上施策の展開Step」に沿って進めていきました。
3か年にわたる取り組みとして実施しました。
実は、フェーズ2の部長対象のマネジメントアップデートプログラムだけは当初の計画にはありませんでした。
フェーズ1のプログラムが終わった後に当社とC社様でレビューを行った際に、互いに「部長の巻き込みが足りなかったような気がしますね」「たしかに、マネジャーたちから話を伺うと、『部長から研修も良いけど、数字もちゃんとやりきること!と以前と全く同じことを言っていて、やりづらさを感じた』という声が半数あったためです。
マネジャーからすると、今回の取り組みは、中長期的な取り組みで、結果的に数字成果にも繋がる取り組みであり、研修と現場を切り離さず、取り組んで、互いのエンゲージメントを高めることで生産性アップ、チャレンジ風土を醸成していこうということだったので、その共通理解を部長の皆様にしていただく必要があったのです。
フェーズ2ではいよいよ若手社員へのジョブクラフティングプログラムに入るので、このままでは、思わぬ方向に進んでしまわないか、心配だ』とのことなので、策を練りましょう」ということになりました。
まさしく素早く試し、素早く学習し…というアジャイルの発想で今後の展開を見直しました。
そこで部長対象に、この取り組みへの関わり方理解を主とするマネジメントアップデートプログラムを実施し、部長の皆様にご理解いただく取り組みを織り交ぜることとしました。
現在は、「3ヶ年やってみてどうだったか?」振り返り、フェーズ4に進んでいます。
ここで、マネジメントアップデートプログラムについても触れておきます。
「研修」という堅苦しい感じではなく、マネジメントのアップデートを通じて、社内のエンゲージメントを向上させることで優秀な人材の離職抑制、生産性のアップ、イノベーション推進に繋がるチャレンジ風土づくりを互いに知恵を出し合ってやっていきましょうというワークショップとして進めていきました。
C社様の事例を通じて、お伝えしたかったポイントの3つ目はエンゲージメント向上のカギは、「マネジメントスタイルのミスマッチ解消」であるということです。
エンゲージメントの低い組織では、価値創造へのチャレンジが生まれるはずもありません。
ミスマッチの解消はマネジャーと若手メンバーが協力していくこと、どちらか一方が頑張らなくてはいけないということではなくて・・・。
ところで、C社様の今回の取り組みですが、人材教育投資の累積効果としては、このように感じていらっしゃるそうです。
コミュニケーションについては、一緒に考えようよ!というモードができつつあるようです。互いの対話の話題に変化の兆しがあるようです。
まだぎこちないところはありますが、メンバーの成長やキャリアも話題にあがっているようです。そうなってくると、最初は、会社が与えられた1on1の制度も、受け止められ方が良い方向に変わってきたそうです。
2つ目に人事評価に対するメンバーの納得感にも変化がありつつ…といったところでしょうか。そもそものフィードバック面談の中身が意図的に変えたマネジャーが出始めているとのことでした。結果通知だけではなく、プロセス行動の承認や今後の課題を一緒に考えたり、動機付けをする機会として活用を試みたり・・・と育成の視点が濃くなってきたという手応えを感じているそうです。
ただまだ十分ではないので根気強く継続していくとはおっしゃっていました。
3つ目、これは結果的に…ではありますが、ストレスチェックや離職率の数値が改善したそうです。取り組みはまだ道半ばですが、離職率が5ポイント改善、ストレスチェックにおいても改善が見られるそうです。
これは、C社様が、最初に打ったミッション再定義、事務所移転、人事制度の改定に、今回の取り組みが繋がり始めたということではないか、とおっしゃっていました。
このことから、3年くらいのスパンで見ると、各施策が「つながる」ことで着実に諸施策の効果が出てくる、ということです。
歩みを止めてしまうと、また先祖帰りしてしまうので、しっかり根付くように続けていっていただきたいなと思いました。
Ⅴ.まとめ
本日のセミナーのまとめです。
企業各社の課題、課題解決に向けてどこから着手するかはそれぞれですので、当社の関わり方も多種多様です。「もう少し詳しい話を聴いてみたい、自社の現状を聞いてほしい」などございましたら、メールでも電話でもオンラインのやりとりでもけっこうです。是非お声がけください。