評価制度

これからの評価制度の課題⑥
~評価者のためのメンター機能を設ける~

価値観の多様化に合わせて人材マネジメントが変われば、人事評価のあり方もそれに合わせて変える必要があります。この課題解決を、評価者だけに任せるのでなく、評価者を会社が支援しながら、会社全体ではかることが重要です。

  • 評価の寛大化傾向とは何か?
  • 中心化傾向とは何か?
  • 今、寛大化傾向や中心化傾向が増えている背景
  • 管理職のせいにするのではなく評価基準そのものを見直すことが必要
  • 評価者のためのメンター機能

評価の寛大化傾向とは何か?

評価の「寛大化傾向」とは、人事評価におけるエラーのひとつで、評価者の評価が甘すぎる傾向にあることを言います。(具体的には被評価者の評価に「S」や「A」といった良い評価ばかりつけるなど)
原因としては、

  • 評価に必要な、評価期間中の部下の事実をよく見ていない

  • 景気付け(良い評価を付ければ本人もやる気になる)と考えている

  • 悪い評価を付けてフィードバック(評価面談等)で部下ともめたくない

などが挙げられます。
特に「景気付け」はきちんと行動して成果を出した人まで、やる気を失うということにつながってしまうことがほとんどです。

本当に「悪い評価」だったならば、嫌われるのを恐れず、正直にその評価結果を伝えるべきです。なぜならそれは、次の期間で行動を改善してもらわないといけないことを伝える良いチャンスになるからです。逆に嫌われるのを恐れて、寛大な評価をし、きちんとした指導しなかった結果、部下は行動を改善できず、さらに悪い評価になったりすれば、きちんと指摘してくれなかった評価者のことを、余計に嫌いになるかもしれません。

中心化傾向とは何か?

これは「B」、つまり「普通」という評価ばかり付けたがる・・・と言えばわかりやすいでしょうか。原因として、

  • 評価者として自信がない

  • 被評価者の立場に立ったつもりになっている(無難に終わらせたい)

  • 「差別反対」「人は何人も平等だ」「自分は神ではない」などの確信犯的理由

特に3つ目の理由は、企業にとって、大切な人材マネジメントの手段のひとつである人事評価を、正面から否定することになる行為なので、評価者として失格です。

今、寛大化傾向や中心化傾向が増えている背景

昨今のように、働く人の価値観の多様化、ダイバーシティなど、互いに「異質な存在を認め合わなければならない」という状況になってくると、今までのような人材マネジメントでは、立ちいかなくなる面が多く出てきます。
例えば、

  • 徹夜をしてでもやれと部下に言ったら、「そういう要求をしてはいけません」と人事から厳しく注意された

  • 厳しく指導をしていたら、「パワハラだ」と言われた

というようなこともどんどん起こってきています。バブル経済崩壊後、経営を立て直すために、良かれと思ってしてきた事も、今では否定され始めているのです。

こうした変化を受け入れず、人材マネジメントの在り方をなかなか変えられない管理職に対して、企業は、コーチングやコミュニケーションの研修、あるいは360度評価などで、反省を促してきました。その結果、最近、中間管理職にある現象が起こってきています。

  • 厳しく指導すると「辞める」と言われてしまうのであまり注意しない

  • 部下が知らない間に人事部に相談に行き、人事部からマネジメントについての改善の指摘を受けた

等の以前には無かった現場の管理職の声を、よく聞くようになりました。管理者が「思い切ったことを出来ない・言えない」といった「弱腰」と言うか「戦意喪失」とでもいう現象が増えているのです。

それが人事評価においても、寛大化傾向や中心化傾向の増加に現われ、評価を甘くしたり、人気取りに走ったりすることに、結びついてしまっているのです。

管理職のせいにするのではなく評価基準そのものを見直すことが必要

人事評価は、業績を向上させていくために、人が人をマネジメントするための手段の一つであり、「信賞必罰」という権限を背景に、社員に望ましい行動をさせていくためのものです。

単純に言えば「やるべきこと」 (評価基準) と、「どこまでやれたのか」(実績)を比べて評価するだけです。しかし、それがやりにくくなっているのは、評価基準に「ダイバーシティ」「価値観の多様化」等の観点を盛り込むことが出来ていないからであって、一概に「評価を甘くし、部下の人気取りをするなどけしからん!」と、現場で苦労している管理職に、そのすべての責任を押し付けるのはあまりに酷です。

スタッフ職にはスタッフ職なりの、営業職には営業職なりの評価基準というように、仕事の性質に合わせた評価基準を考えるなど、「多様性」を評価基準に組み込む必要性が今生じているのです。

今の時代、そのような新たな評価基準を、管理職はメンバーにメッセージとして発信し、現場で活用することで、はじめて人材マネジメントが出来るようになるのです。

評価者のためのメンター機能

「多様性」を盛り込んだ評価基準を作る必要があるとは言うものの、すぐには皆が納得できるような評価基準が創出できるとは限りません。そのような状態でも、評価結果の被評価者へのフィードバックは、説明責任として行わなければならないのが現実です。

ですから、そういう場合、評価者は、シビアな反論や意見がくることを予測し、相当なプレッシャーを感じてしまうはずです。そのプレッシャーに負けて、また「寛大化傾向」の評価を行い、「臭い物にはふた」で問題を隠してしまわないとも限りません。

また、そうでなくても評価者は、常に「事実情報が足りない」と悩んだり、「話下手」でフィードバックに自信が持てなかったりと、常に苦悩を抱えています。

これらは「まじめに評価をしよう」と思うからこその悩みであり、現実に評価者は、部下の年収を何百万円も減らせる権限を持っていることからすれば、悩まない方が不思議であると言えます。

そこで、こういった今後の状況を踏まえて、評価者がきちんと評価に取り組めるためには、以下のような評価者に向けた支援を用意することが必要です。

  • 評価に悩んだときのメンター機関の設置

  • 評価についての会社としての共通の価値観

  • 評価者同士が相談できる環境

価値観やダイバーシティ等、経営環境が以前とはまったく異なる今、人事評価が難しくなってきている時代だけに、評価者を孤軍奮闘させず、支援する仕組み作りが、今必要なのです。

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