コミュニケーション

本音の対話ができていますか?
~1on1ミーティングの効果を高めるコツ~

1on1、ナナメ1on1、2on2・・・。なぜこんなにまで対話に注目が集まっているのか?対話を効果的なものにするために本質的に大事なことは何か? について考えていきます。その上で、弊社お薦めの「ぶっちゃけ対話」を紹介します。対話による人材育成・組織活性化にお役立ていただければ幸いです。


1.今なぜ対話に注目が集まるのか?

Googleで「対話」と検索すると6000万件ヒットします。
「1on1」では1億2400万件ヒットします。世間の関心の高さがうかがえます。
ここまで注目を集めている背景に何があるのか探っていくと、3つのキーワードが挙げられます。

①価値観の多様化
かつてのように、仕事最優先で一致団結して仕事に取り組むのが当たり前という時代ではありま
せん。社員と会社の関係性が変化しています。
組織の論理優先ではなく、組織と個人の関係は対等であるという考え方が普通になってきました。
また、転職が一般化しており、前職で身に付けた仕事への向き合い方や進め方が持ち込まれ、
混在しています。なので、十分な意思疎通を図らないと、行き違いが生じ不具合が発生するリスク
が高くなっています。
多様性(ダイバシティ)を活かすことが組織を活性化するとか競争上の優位性を高めると言われ
ますが、意思疎通がしっかりできていないと、誤解や混乱ばかりが目立ってしまいます。

②仕事の細分化
最近の職場は、仕事が専門分化されています。
ある分野についてはメンバーの方がリーダーよりスキルが高いということが起きています。
リーダーからすると、傍で見ていても「メンバーの仕事の進め方の良し悪しがよく分からない」
ということがあるようです。
仕事の進捗状況や直面する問題について摺り合わせる場を頻度高く設けないと状況が掴めず、
マネジメント不全を起こすリスクが高まっています。

働き方の多様化
サテライトオフィス・フリーアドレス・時短勤務・フレックスタイム制など、働き方の多様化
により、従来自然発生的に起こっていたコミュニケーションが減少しています。
新型コロナウイルスの影響でテレワークが一気に広まったことも影響しています。
毎日出社して顔を突き合わせていれば特に意図せずともコミュニケーションが生まれていました
が、コロナショック以降は意識的にコミュニケーションの場を設けたり、コミュニケーションの
取り方を工夫する必要性が高まっています。

*ちなみに「対話」の意味を調べると・・・、
・「向かい合って話すこと:広辞苑」
・英語では「ダイアローグ(dialogue)」
「ダイアローグとは、考えをハッキリ述べつつも、自分の考えや立場に固執することなく、
互いの言わんとする意味を深く探求する会話:デビット・ボーム(物理学者)」
・「人材開発や組織開発の分野で用いられるダイアローグとは、単なる情報のやり取りではなく、
話し手と聞き手が理解を深めながら、互いに共感や意識・行動の変化を引き出し合う創造的な
コミュニケーションのあり方:日本の人事部 人事辞典」 


2.そもそもコミュニケーションとは?

「組織の問題の大半はコミュニケーション不足から発生する」「やっぱりコミュニケーションの
問題ですね」というフレーズをよく耳にします。
コミュニケーションの取り方(やり方=スキルやITツール)について数多のソリューションが
登場しています。
しかし、こういったトレーニングやシステムを取り入れれば即コミュニケーションの問題が解決
されるというわけではありません。
Slack(ビジネスチャットツール)のCEOが面白いことを言っていました。
「Slackには、組織の問題を自動的に解決する機能は備わっていない」と。

コミュニケーションの本質を分かった上で、スキルトレーニングやITツールを活用した方が
得るものが多そうです。
そこで「コミュニケーションの本質は何か?」について確認しておきましょう。

コミュニケーションの本質は、「相互理解を深め、信頼関係を築くこと」です。
相互理解とは「自分が相手を理解すること+自分を相手に理解してもらうこと」です。

■「相手を理解すること」そのためには・・・、

✓相手の話を聴くこと。言葉を聞くだけでなくその背景まで聴き届ける。
「あんなことを言う背景に何があるんだろう?」と慮って聴く。

✓相手を尊重する心の姿勢で向き合い共感すること。
「どうせあの人は・・・」という先入観を持たずに敬意を持って相対する

✓日頃から相手が話し易い状況をつくること。
近づきにくいオーラを出していないか?

■「相手に自分を理解し易くすること」

“分かってくれない”と嘆く前に、分かってもらう努力をする。そのために・・・、

✓自分自身を知ること(自分の特性・興味・価値観を知る)。
例えば「得意な情報インプット方法は、見るタイプ(目)か聞くタイプ(耳)か?」

✓自己開示すること(自分からぶっちゃける)。
例えば「孤独な環境に置かれることは、仕事に集中できるから〇なのか、それとも
寂しくなり落ち着かず仕事に集中できないから×なのか」

✓自分の言葉で(借り物の言葉ではなく)相手に分かり易く語ること。
自分が語る言葉を深く信じている時、言葉に力が宿り、相手の心に届く

相互に理解し合う範囲を拡げ、信頼関係を築いていきましょう(100%分かり合えること
は不可能ですが・・・)。

対話は、コミュニケーションの一種です。コミュニケーションの本質をわきまえて対話を行う
のと、本質をわきまえずに対話を行うのとでは、効果が違ってきます。例えば1on1対話で・・・。

コミュニケーションの本質をわきまえてない コミュニケーションの本質をわきまえている
●部下の言葉を受けたらすぐに話す
(会話のキャッチボールの如く投げ返す)
●2週間に1度の1on1の時にまとめて
部下と話をしようとする
●部下が話をしてくれない時、どうやって
部下の口を開かせるか? テクニックの
問題と考えて部下に相対する
●部下の言葉の奥に何があるのだろうと
想像しながら最後まで聴き届ける
●対話場面だけでなく、日頃のちょっと
したことから良い関係を築こうとする
●部下が話してくれないのは、こちらの
自己開示不足でラポールがかかってい
ないからではないかと考えて相対する

最近では、直接対面してのコミュニケーションが減り、オンライン(PC画面越し)での
コミュニケーションが増えています。直接対面とオンライン、各々の特性の違いを知り
使い分けていくことは、これからのコミュニケーションの作法です。

〔直接対面の特性〕
・言葉以外のあらゆる手段を使って意思疎通できる(リッチコミュニケーション)
・場の空気による影響力を発揮しやすい(良きにつけ悪しきにつけ)
+:熱量が伝わる、インパクトが強い
-:空気を読み過ぎたり(過剰忖度)、空気に飲まれて言いたいことが言えない
・対話の場を設けるための制約が多い(場所・時間・コスト)

〔オンラインの特性〕
・対話の場を設けやすい(場所・時間・コスト)
・場の空気による影響力を発揮しにくい
+:過剰忖度が起きにくく、言いたいことを言える
-:言葉にしないと伝わらない。細やかな感情の機微を掴めない
・短時間の対話を高頻度で設定するのに向いている

コミュニケーションの本質、直接対面とオンラインの違いを自覚した上で準備し、
対話に臨むことで、今までよりも充実した対話になるのではないでしょうか。


3.「ぶっちゃけ対話」とは?

1on1にせよ、3人以上でのミーティングにせよ、お互いがどれだけ「本音」で率直に
話し合えるかで、対話の中身やアウトプットは大きく違ってきます。
例えば、何か問題に直面していて解決しないといけない場面を想定してみてください。
もし本音ベースの話し合いがなければ・・・、
「本当に重要な問題に気づかない」「表面的な対策に終始する」「ありきたりのアイデア
しか出てこない」「(解決策を決めたとしても)ヤラサレ意識で本気になれない」
「ソコソコの実行に終わる」といったことになってしまうでしょう。

本音で話し合い、従来の枠を越えた解決策を創発する対話のことを「ぶっちゃけ対話」
と言います。「ぶっちゃけ対話」には3つのステージがあります。
〔ステージ1:共感・理解〕
〔ステージ2:思い込みの発見〕
〔ステージ3:問題解決アイデアの創発〕です。

「ぶっちゃけ対話」が上手く行くと、
「“実は・・・”という形で埋もれていた問題が表に出てくる」
「自分に思い込みがあったことに気づく」
「新しい切り口のアイデアが出てくる」
「やろうと決めたことへの肚落ち感がある」
「本気で成し遂げるべく実行する」といった効果が期待できます。

「ぶっちゃけ対話」の要点をお伝えします。

①「いきなり問題解決」モードを止める
とかく「どうやってこの問題を解決しようか?」と考えがちだが、これを止める。
問題を単純化してうわべの解決策を講じることで本質的な問題が封印されてしまい、
後になって同じような問題が再発する。あるいは形を変えて噴出する。
「いきなり問題解決」に走ることで余計に問題がこじれてしまう。
テレワークになって部下の様子が分からずマネジメントしにくいから、部下のPCに
監視機能をつけて様子を把握しようなどというのは最たる例。

②「本当はどう感じているのか?」感情を吐露する
心の奥底にしまい込んでいた気持ちを言葉にする。
すると「そんなふうに感じていたんだぁ」という共感の空気が生まれる。
「共感してもらえている」と分かると冷静になり現実と向き合える。

③「なんで、そういう感情が生まれるんだろう?」
「本当は〇〇したい(〇〇であってほしい)のに、そうなっていない。だからモヤモヤ・
イライラした感情が生まれている」ということが多い。お互いの置かれている状況や大事
にしていることを理解し合えると、問題の輪郭がハッキリしてくる。

④「何か思い込んでいることはないか?」
ここまで話し合ってくると、「暗黙の前提」みたいなものが浮かび上がってくる。
お互いに思い込みがあったことに気づく。その前提をいったん脇に置いて、今まで当たり前
だと思っていたものを疑ってみる。

⑤「違う角度から考えられないか?」
「こんな見方もできるのではないか?」「こういう切り口もありだよね」「だったら、
こうしてみたらどうかなぁ」と、従来にないアイデアが湧いてくる。

⑥「まず、何から始めようか?」
アレコレ考えた後、「まずはこれをやろう」と具体的な行動を決め、新たな一歩を踏み出す。
本音で話し合う中で見出した解決行動だから、肚落ち感があるし、やり遂げようという意欲
も高まる。そして、「本気で実行」の機運まで高まる。

「こんなプロセスを踏むのは面倒くさい」と思われましたか?
「ぶっちゃけ対話」を学んだあるマネジャーがこんなことを言っていました。
「『忙しくて本音で対話している暇がない』ではなく、『本音で対話しないから余計に
忙しくなる』のだ」と。御社では、本音の対話ができていますか。


4.対話はマネジメント・リーダーシップ革新とセットで

ここまで、「対話に注目が集まる背景」「コミュニケーションの本質」「ぶっちゃけ対話の
Know how & Know Why」をお伝えしました。対話による人材育成、組織課題の解決の参考
にしてください。

対話はマネジメント・リーダーシップにおけるひとつの場面です。
ただし、日頃のマネジメント・リーダーシップのあり方が象徴的に表われる(凝縮されて
表われる)場面が対話です。
対話を機能させるためには、ただ単に対話のスキルを身に付ければいいというわけでは
ありません。
「マネジメント・リーダーシップ革新という文脈に対話を位置づけてコミュニケーション
設計をしていく」ことで、実の有る対話が可能になります。

1on1ならまだしも、チームでの対話を「ぶっちゃけ」にするのは難しいという声を
お聞きします。ファシリテーターが立ち会った方が効果的ということもあります。
そういう場合は、第三者を触媒役として活用するのも手です。
「ぶっちゃけ」ファシリテーターが必要な場合はご相談ください。


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株式会社マネジメントパートナー

代表取締役 兼 人材・組織開発コンサルタント 廣田 文將

 

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