マネジメント / リーダーシップ

グループ会社・子会社に必要な人づくり・組織づくりのポイント①

*この記事は、当社が2023年10月11日に実施したセミナー「グループ会社・子会社に必要な人づくり・組織づくりのポイント」を文字に起こしたものです。

皆様こんにちは。マネジメントパートナーの関と申します。
本日は「グループ会社・子会社に必要な人づくり・組織づくりのポイント」についてお伝えします。どうぞよろしくお願いします。

大手企業のグループ会社・子会社で、従業員数200名~500名くらいの中小・中堅企業と関わらせていただくケースが多いのですが、グループ会社・子会社の経営者や幹部の方々からよくお聞きする声をまとめました。下記をご覧ください。

一方、プロパー社員の方々からは次のような声をよくお聞きします。

このような内容ならば、一部はグループ会社・子会社に限った話ではないように見えるかもしれません。ではどこがグループ会社・子会社ならではなのかと申しますと、こういう声に対して解決策を打っても、数年後にはまた同じ問題がぶり返す点なのです。

手を打って一度は解決したはずなのにまたぶり返す。
会社を変えたいと意気込む方であればあるほど無力感や憤り、それを通り越して諦め感を持つという方がいても不思議ではありません。
これらが意味することは、局所的な対応では問題解決の打ち手としては不十分ということです。ではどうすればいいか?

根本的な問題解決策を見出すには、局所的な問題ではなく組織の全体構造、とりわけ“繋がり”に着目することが重要です。

例えばビジョンや戦略を策定するにしても親会社との関係によって中長期的に起こりうることを最初から見越して手を打つですとか、出向で役員が定期的に入れ変わるならばどうすれば新役員にブレない会社の軸をご理解いただき、ともに発展のシナリオを描けるか等、強い影響力がある親会社とG会社・子会社との繋がり、組織内のハードとソフトの繋がり、どこに欠損があるのかしっかりと向き合うことが第一歩です。

そこでこのセミナーでは大きく3つのことをお伝えします。
1つ目に、G会社子会社における“変わる”を阻害する問題の全体像を整理します。
2つ目に、その問題解決に向けた糸口を、
3つ目に、私どもが問題解決に向けた関わった事例をお伝えします。

このセミナーでお伝えする内容、特に第1章は、一見どうしようもない、薄々気づきながら蓋をし続けてきたような類の話になります。「それは親会社のせい、過去の経営陣のせい」と蓋をしたくなる方、「この会社は結局変わらないのか」と絶望感にさいなまれる方もいらっしゃるかもしれません。それだけこの問題は根深く、向き合うのが不快ということです。
第2章で「糸口」と言っていますが、「魔法の杖」のような話ではありません。これらを手掛かりに、組織内で立場の垣根を越えて様々な関係者と対話し、向き合うべき問題を直視し、皆を巻き込みながら進めるための「切り口」として聞いていただければ幸いです。


では第1章、企業の「変わる」を阻害する問題の全体像について、私どもの考えをお伝えします。
先ほど、「ぶり返す問題の奥には、親会社との関係に強い影響力がある」と申しましたが、内訳はこちらです。

親会社との関係による前提条件、それが引き起こすグループ会社・子会社独自の事象。全てのグループ会社・子会社に当てはまるものではありませんが、これから申し上げる項目で当てはまることが多いほど、影響度合いが高くなっているという読み取り方をしていただければと思います。

まずは親会社との関係による前提条件です。

1つ目、親会社から請け負う仕事が事業収益の大半を占めている。
2つ目、経営意思決定権が親会社にある。これは株式の51%以上を保有しているとか、連結決算の対象になっているということですね。
3つ目、独自の人事マネジメント。採用、育成、配置、登用、評価が親会社と別の内容になっていることが出向者とプロパーの間に様々な事象を引き起こす可能性があります。

では、前提条件がどのような独自の事象を引き起こすのか。6つご紹介します。

1つ目、親会社への依存体質。親会社から言われたことはやるけれど、こちらから提案するような能動的動きがないということです。親会社がグループ会社との共存のために利益率の高い仕事を与えたり、お客様を紹介するような至れり尽くせりの状態だと余計に助長されます。

2つ目.社長・役員が親会社からの出向で来て、数年で入れ替わる。

3つ目.出向管理者が現場を知らない。すると事業への思い入れや社内外の人脈が薄く、それが調整やテーマ推進力の低下を生むですとか、新しく出向で来た経営陣が自分の色を出そうとして経営方針が数年で刷新されて社員が右往左往するということが起こりえます。

4つ目.出向者とプロパーで給与制度が異なると出向社員の待遇に優秀なプロパーが不満を持つですとか、責任認識の薄い出向で来たベテランが起因となりチームの士気が下がるといった可能性が高まります。

5つ目.プロパーが中途入社中心。自社へのエンゲージメントが低くなりがちであり、何か手を打たないと組織が一つにまとまっていかない可能性があります。

6つ目.親会社の中計やルールに従わざるを得ない。親会社が株主でかつ、最重要顧客であり、その意向に沿うことが絶対である中、グループ会社・子会社独自の思想、方向性にそぐわない内容だったとしても従わざるを得ず、被害者意識を持ちがちです。また新事業への投資など思い切った意思決定ができないばかりか、親会社から見て収益改善の見込みがなければ、現状維持の限定的な投資しかされない、最悪の場合には売却や整理の対象となりえるのです。

これらが意味することは何か?
それは、親会社との関係による前提条件とそれが引き起こす独自の事象が組織の「ハードとソフト」を分断しているということです。

具体的に見ていきましょう。
グループ会社・子会社が構造的に抱えがちな分断は5つです。

「頻繁な方針転換」「他責志向の蔓延」「会社組織にそぐわない過度な仕組み、制度、システム導入」「親会社の意向で仕掛中の成長戦略が頓挫する」「全階層におけるオーナーシップ不足」。これらが、「組織の成功循環モデルの逆回転」を引き起こします。

こちらはマサチューセッツ工科大学ダニエル・キム教授が提唱した内容ですが、逆回転というのは、④の求める成果が上がらないことで関係が悪化し、受け身の思考、消極的な行動を助長し、さらに成果が出ず関係が悪化するという内容です。これを正回転にするには関係の質を高め、当事者意識を持ち、自発的な行動、一緒に成果を出すことで信頼関係を深めるという工程が欠かせないのですが、その逆ということですね。先ほどの5つの要因に照らして、一つ一つ見ていきます。

1つ目は「頻繁な方針転換」です。

転換に伴って組織体制、教育の必要性の可否等、社長の考え方ひとつで大きく変わる。
新社長が1年目は様子見、2年目に新機軸の大号令、3年目で形になったところで交代…
この繰り返し。プロパー社員が確固たる軸を持ち難く、経営への信頼低下、大局的な思考の欠如に陥りやすいのです。

2つ目は「他責志向の蔓延」です。

例えば出向管理職は「現場を知らない、思い入れを持ちきれない、信頼できる人脈もない、中にはマネジメント経験がないこともある」中で「中途社員中心、しかも多様なメンバー」をマネジメントしなければならないため一方的な指示命令となりやすい。

それで上手くいかなくても「この会社には親会社ほどの能力やマインドを持つ人がいない。だからできない」という発想になって、自身の「マネジメン能力不足」に焦点を当てない。「自責思考の欠如」ですね。

一方のプロパー社員は「親会社の要求に応えるため目先の仕事で手いっぱい」な中で「距離の遠い出向管理職と相互信頼が築きづらい」ために「本来だったらあるはずの上司との深い関係から学ぶ機会が得られない」「意図的に視座を高める経験を積みづらい」ことで自律的に考え挑戦する力が養われない結果、「ますます目の前の要求に応える」仕事しかできない可能性が高くなります。視座の低い、「指示待ち、受け身の行動」です。

さらに彼らに自律的に挑戦できない原因を聞くと「時間がない、上司が一緒に考えてくれない、会社が…」と、自分に矢印が向かない。こうして他責志向が複数階層に蔓延していくのです。

3つ目は「会社規模にそぐわない仕組み、制度、システムの導入」です。

例えば出向経営陣や管理職がグループ会社の成長やプロパー社員の能力、自律性が向上しないことに手詰まりを感じて、自分の在籍中に何とか実績を作るために建屋変更、取引先変更、制度改定、新システム等を無理やり導入します。

ただプロパー社員からすると意図が良くわからないままやらされ感満載。

例えば席が隣なのにいちいちシステムを通して上司に依頼する、SFAに入力しても誰もアドバイスをくれない、それで生産性は上がるどころかむしろ下がるし、導入した経営陣への信頼、また経営陣は経営陣で成果を出さない現場への信頼双方に低下する等、問題解決どころか悪化することも少なくないのです。

これらは仕組みそのものが悪いのでなく、会社規模にそぐわない過度なハード整備がソフトとの繋がりを分断させているということです。

4つ目は「親会社の事情で仕掛中の成長戦略が頓挫する」です。

事業収益の大半が親会社の仕事というグループ会社、子会社にありがちな状況です。
例えば、「外販強化」だと言われて戦略を描き取り組むと、数年後「親会社の仕事を優先しろ」と言われるといったことが繰り返される。

さらにグループの再統合等で人員は多いがシナジーを出せない、グループ間連携を親会社から指示されているがやり方がわからない、新事業などは取り組み方もわからないというように「やり方がわからない、わかってもできない、できても頓挫する」と挑戦するための能力開発も関係構築も後手に回る可能性が高いのです。
それで未達を繰り返す。そのうちに「うちでは戦略等やるだけ損」等否定的な組織体質、風土が定着する要因となる可能性があります。

5つ目は「全階層におけるオーナーシップ不足」です。これが非常に深刻です。

例えば出向者が「私の所属は出向元の親会社。あくまでここにいるのは一時的なこと」という態度でいる、中途のプロパーが「前の会社の方が得難い経験や仲間がいる」等、この会社を自分の会社という強いエンゲージメントで捉えられない状態が起こりえます。

ここに対して手を打たないと、どうしても責任への向き合い方は薄くなり、自他へのぬるい妥協につながっていきます。

例えば本気度の低い言動をした人に対して「あなたが本気で仕事に向き合ってくれないことに腹が立っている」なんて、正直直接言うほどには自分が仕事にコミットできていない状態なわけです。そのため、「チーム内の役割が不明確だ、仕事の進め方が問題だ」というような本質に迫らない表面的な問題提起をして何の解決もできない、それが陰口や愚痴という形で表面化し、組織への愛着が失われていく。そのうち例えばちょっとした手抜きへの見逃しですとか、楽をするためとしか思えないアウトソーシング等、どう見ても責任を欠く行動が散見されるようになって、本気で仕事に向き合う人がむしろ孤立していきます。

周囲も「そこまでのことはできない、自分に火の粉がかかるのが嫌」と様子見する人が増え、組織や関係者に対する関心が薄れていく。この状態が繰り返されると、本気で行動する人ほど心が折れ、諦めて行動を止めたり、会社に見切りをつけて辞める人が出てくることもあります。

ここまでにお話した「ハードとソフトの分断5つの要因」と、それがもたらす「組織の成功循環モデル逆回転構造」を絵でまとめました。皆様の所属組織ではどんなことが起こっているでしょうか?

さらに、ここまでにお伝えしてきた問題はグループ会社・子会社において一度解決してもぶり返すのが厄介であると冒頭お伝えしました。ではなぜ同じような問題が繰り返されるのか?その理由は、「関わり合い、成長投資、良き体質の3つが断続的にリセットされ続ける」ことにあります。

1つ目はリセットされ続ける「関わり合い」本来組織において、尊敬できる上司や先輩との出会い、同僚、後輩との切磋琢磨、経営者との深い信頼関係の元に築かれる視座の高まり等を通じて、挑戦や成長、質の高い学び、自律性、悪い情報を率直に上げる心理的安全性、損得度外視の助け合いを産み出す源泉となるはずですが、G会社・子会社では経営陣の頻繁な交代、プロパー中途社員の退職と、こうした深い関わり合いが定期的にリセットされやすいのです。

2つ目はリセットされ続ける「成長投資」。3年後やさらに先を見据えた成長投資を大胆に行うような難しい意思決定が求められても、次の年には親会社の意向により「即座に中止せよ」と言われる等、足元の収益を強く求められ、将来の組織づくり、人づくりがしづらい状況が起きる可能性が高くなります。

3つ目はリセットされ続ける「良き体質(組織風土)」。関係性や成長投資がリセットされ続けることによってその組織が創業時から温め続けてきた、使命や経営理念に基づく良い体質(簡単にあきらめない、お互いのことを絶対に見捨てない等)を体現する人が減り、伝播し続けようという意欲が低下し、いつしか志の低い妥協、受け身行動といった悪しき思考習慣・行動習慣が蔓延していく可能性が高くなります。

以上、第一章のまとめです。

親会社との関係による前提条件、独自の事象が組織のハードとソフトの分断を引き起こします。さらにこれらの状況によってリセットされ続ける関わり合い、成長投資、良き体質が問題を繰り返し引き起こす要因となっているのです。冒頭も申した通り、重要なことはこうした問題の全体像をとらえて、当社が向き合うべきことは何か、組織内で立場の垣根を越えて様々な関係者と対話し、向き合うべき問題を直視することが重要です。

第2章で、この構造がある中で問題を解決する「糸口」をお伝えします。

関連記事
おすすめ記事
PAGE TOP