マネジメント / リーダーシップ

グループ会社・子会社に必要な人づくり・組織づくりのポイント②

*この記事は、当社が2023年10月11日に実施したセミナー「グループ会社・子会社に必要な人づくり・組織づくりのポイント」を文字に起こしたものです。

親会社との関係による前提条件、独自の事象が組織のハードとソフトの分断を引き起こします。さらにこれらの状況によってリセットされ続ける関わり合い、成長投資、良き体質が問題を繰り返し引き起こす要因となっているのです。冒頭も申した通り、重要なことはこうした問題の全体像をとらえて、当社が向き合うべきことは何か、組織内で立場の垣根を越えて様々な関係者と対話し、向き合うべき問題を直視することが重要です。

第2章で、この構造がある中で問題を解決する「糸口」をお伝えします。

冒頭にお話しした通り、私どもは組織変革の鍵を点ではなく「つながり」で捉えています。そして、グループ会社、子会社においてはこの繋がりが断続的にリセットされ続けるという話をして参りました。

こうした状況を前提に、問題を解決するための糸口は何か。

それは、断続的に繋がりがリセットされる構造の中で経営成果を出し続けるために、

  1. 現場主導によって「ブレない軸をもった経営構想づくり」「共創・自律の組織運営」が実現できる組織をいかにして作るか」
  2. そのために、プロパー・出向、階層間の隔たりがある中で自社内の関係性をどれだけ強固なものにできるか」です。

これらを実現するポイントは3点です。
1点目は「市場で決して負けない盤石な戦略」とそれを可能にする経営チームづくりです。

新たな伸びが見込める事業があれば話は別ですが、大幅投資がいつ途絶えるかわからない中で無理やり攻めの戦略を策定するよりも、まずは現事業において自社の強みを最大化するためになすべきことを絞り込んで戦略を策定し、その実行においてはオペレーション。どのような仕組で進めていけば戦略が着実に実行されて、各部署の整合性を図り、また同期化。実行すべきスピードやタイミングにズレが生じずに進めるのか。また戦略は仮説にすぎません。皆で動いた結果から素早く学び、伸ばすべき能力や連携の形を有機的に変えていく。そんな戦略とオペレーションの一気通貫を意図しながら、実行しつつ進化・深化させていくことです。

また経営チームづくりですが、ここでいうチームというのは、個々の目標よりも、チームとしてのありたい姿、共通目標を大切にしている状態を指します。
そして経営チームですから、各部門における経営を担ってほしい人材をプロパー、出向の垣根なく集める。

とかく「割り振られた自分の目標さえ達成すればそれでよい」という意識になってしまい、自部門は達成しているから、他部門が目標未達でもそれは私の問題ではないと、自分の目標ファーストになってしまいがちです。そうならないためにはチーム目標策定、実行過程での強い責任認識や、お互いの垣根を超えてでも成し遂げたい、本心からありたい姿を描くことが欠かせません。これまでの何が問題だったのか、このままだとどうなるか、これからどうしたいのか、ぶっちゃけの本音で対話し、現状とのギャップを埋めるための共通目標、すべきこと、お互いへの関わり合い、実行過程で内省、学習しながら自分たちで達成の道筋を創るチームを、メンバー選定、コミュニケーションの場の設計を通じて本気で実行していく仕掛けが重要です。

2つ目は「共創・自律的な組織運営を可能にする重点指標の見える化・仕組み化」です。

せっかく経営チームによるブレない軸を持った戦略を作り上げたところで、出向で交代された社長や幹部になぜそれが必要なのか、実際に成果に向かっているのか納得のいく説明をしなければ意図が伝わらないので、出向社長や幹部が独自の方針を出さざるを得ず、それが自律的な組織運営を困難にしているわけです。
だからこそ、ブレない経営構想を具現化するうえで重点となる指標の定義と定量化、そしてその指標をデータとして全社で共有し、進捗を追いつつ、到達のための打ち手を仮説検証できる仕組みを作ることが重要です。
社長交代があっても戦略における重点指標の進捗が経営成果に連動しているデータを見せ、論理的な打ち手を説明し、経営判断を下しやすい状況を常に作ることでどなたが社長としていらしても経営チームと状況を共有、同じ方向を見て深化できる状態を目指すということです。

3つめは「三位一体の取り組みで挑戦する人を意図的に創出すること」です。

いくら素晴らしい戦略と実行の仕組みが出来上がってもそれを行うのは人。現場の中心に立って多様な人と関わりながら戦略を実行し、ありたい姿の実現に向けて前向きに振り返りながら試行錯誤を繰り返すチェンジリーダーとなる意欲を持つ人が各階層で増えていくよう「チェンジリーダーを質・量ともに支えるコミュニティ」「チェンジリーダーが育まれる組織環境整備」との三位一体で人材開発、組織開発施策を具体化し、この組織に対して自分事として責任を果たす人、組織の良い体質を体現し、周りに伝播する人を増やしていくこと。これらの施策を運用しながら、挑戦する意欲を強めるのに本当に必要な場や整備すべき組織環境は何かを模索することです。こうしたポイントを通じてリセットされ続ける繋がり構造に負けることのないしなやかで強い組織と人を創っていくことこそがグループ会社・子会社の問題解決に必要と考えております。

以上、グループ会社・子会社固有の問題解決に向けた糸口をお伝えしました。
この後、私どもが関わらせていただいた事例を2社お伝えします。


1社目は、第2章でお話しした切り口の中でも「盤石な戦略策定、経営チームおよび重点指標づくり」に関する事例です。製造業、社員数150名のA社様です。

主催者様の現状や課題認識はここに挙げた通りですが、この中で特に「部長格のプロパー、出向幹部に次代の経営を担ってほしい、そのための視座を獲得してほしい」という課題をお持ちでした。そこで先ほど申した通り、このメンバーが一つのチームとして、自分たちで経営戦略を創ることをきっかけに進めようということになりました。

こうしたことを進めていくときにありがちな落とし穴は、主体者が孤軍奮闘したり、先に申したようなチームの認識がなく責任を曖昧にしたり自部署の目先テーマに偏重するといったことが考えられます。

そうした落とし穴にはまらないためにも、まず経営成果につながるテーマを題材にチャレンジの方向を決めるということが欠かせません。そもそも企業が社会的責任を果たし続けていくためには、持続的な経営成果が不可欠です。その経営成果につながる「ビジョン・中長期経営計画・事業計画」完遂に役立つ実務課題を題材にし、これは、ただのお勉強ではなく、本当に当社の未来を自分たちの責任で創る内容なのだと共通理解する。
ですからA社様では社長自ら招集されたメンバーに対して自らの感じる危機意識を赤裸々に語り「皆さんが主導になって経営計画を作ってほしい」というメッセージを伝えました。実際の進め方においては、1つのチームとしてやっていきますので、お互いが何を理想と考えているか、現状の何を問題と思っているかを紙に書いて見える化し、本音の対話を促すことで皆で取り組むべきありたい姿は何か、徹底的に対話を促します。そして、お互いにどう動くか握り合って実践するのですが、随時参加者同士が定期的に集まる場を作ってどんな動きをし、そこで何を得たか共有、どうすればありたい姿にたどり着けるか、この変革に対して自分や周囲はどんな感情を抱いているか振り返りながら進めるという、ありたい姿に向かうストーリーを皆で丁寧に歩んでいくアプローチで進めました。

実際の動きにおいては、まず最初の年度でチームとして共通のありたい姿を描き、そこに向かうための戦略、オペレーション、どんな指標で成果を見える化するか何度も対話を重ね、仮説を創ることからスタートしました。

私どもも定期的にその会に入り、本来の目的に向かえるようファシリテーターとしてご一緒しました。それを社内に共有しながら行動することで本当にこの戦略、オペレーション、指標で良いのか検証。その過程で仕事を段階的に任せて次世代の人材育成を並行で進めていきました。この間、何度も「自分の目標さえ達成すれば良し」という行動傾向に戻るということがありましたので、その度に「このチームのありたい姿に向かえているのでしょうか?」「何が元の行動に戻ってしまう要因なのでしょうか?」と問いかけながら目的に向かう道筋をたどりました。

この実践によって幹部、部門同士の施策がありたい姿に向けて整合性が生まれました。

例えば営業がヒアリングしたお客様の中長期課題に対して、技術と製造の主要メンバーが集まって当社にできることや今後必要なアイテムを検討する会が設けられるなど、お互いの支援体制や連携策が具体的行動レベルで連鎖してきたこと。年間カレンダーでいつの時期までにどのくらいアウトプットがないといけないかと、同期化、動くタイミングやスピード感に一体感が生まれてきたこと。

次に経営計画の作り方が社長が作ったものを部門長に落とすという従来のやり方から、まず部長格メンバーたちが作り、社長にプレゼンすることから作り込むというやり方に変化したこと。

そして経営チームが人事任せにするのでなく自分たちで人材確保、育成案を描き、人事に提案して一緒に作るという経営戦略と人材戦略の連動という行動が起こるようになりました。

誰か一人に責任を押し付けるのでなく、幹部候補の皆様が一体のチームとして組織の将来に向けて行動を起こす経営チームづくりの結果として、行動様式が変化してきたという事例です。

2社目は「三位一体による挑戦するチェンジリーダー創出」の事例です。情報通信業、いわゆるSIerのB社様、社員数400名です。

「市場環境変化に伴って挑戦するリーダーを創出したい、それも育成そのものを目的とするのでなく、組織としての価値創造につなげていきたい」という課題認識です。

とかくこうした施策は一過性の施策になる、提言を固めたところで「言った者負け」になり意欲が高まらないという状態になりがちです。つまり、挑戦する人をどう作るか?という観点だけでは不十分なのです。

挑戦する人にその意欲を高めてもらうためには、どういう発想をすれば挑戦できるのか、そもそもやれる時間があるのかという目先の悩みを取り除いてあげること、それをやり遂げたときに価値を感じられる組織環境が整備されているかという三位一体状態をどうしたら作れるのか?という発想が欠かせません。

そうした前提でステップを組み立てていきます。

まずは問題意識の喚起。社長や幹部に必要性を認識いただくために、社員にエンゲージメントサーベイを実施しました。その上で現状を一緒に分析し、新たなリーダーを産み出すためにどんな人づくりが必要か協議し、そのためにはどんな環境が必要なのか現状分析。その結果、風通しを良くするため、挑戦環境と作るために何が必要か、当事者に仮説を考えていただく施策をスタートしました。進め方は、まず社長が直接候補者に経営としての考えや今後どう変わっていきたいのかをオープンに対話するところからスタートし、さらに社内だけでなく親会社運営の越境学習コミュニティに参加を促して発想を広げる機会、やり切る時間を創るために部署体制を整えました。そして、数か月の期限内で組織への提言が具体化できる状態を目指しました。その実践で見えてきた次世代リーダー自身、およびマネジメントの課題を整理し、本当に解決すべきことは何かを作り込んでいきました。

この施策によって得られたことは、チェンジリーダー候補者の意識、行動変化です。

従来はエンゲージメントサーベイ内の経営への参画意識スコアが業界平均に比べても低い結果だったのですが、強い興味、関心があると答えた候補者の割合が倍増しました。これは社長や人事部の方々、グループ各社との越境学習によって視座が高まった一つの証拠と言えます。また、これは今回の参加者が発案、主導の基に行ったことですが、従来から社内公募していた挑戦課題の中身が社員にとってだけでなく、組織、お客様にとっての価値も考えた内容に変化するよう、社内の仕組みを最適化した。
B社様、従来から社内ポータルサイトで挑戦課題を公募するという仕組みを持っていましたが、これまではこの中身が社員にとっての価値しか感じられないような「わがまま」ともとれる内容ばかりで、はっきり申し上げると形骸化していました。ここを今回の参加者の発案で社内表彰、採用になった場合の評価指標、取り組む時間捻出のための体制づくりを管理職を巻き込んで行い、ポータルサイトから社員の発信を強めたのです。結果、アイデアの中身が、経営陣から見ても組織、お客様の価値を考えた内容に変化しており、採用率が飛躍的に伸びたということです。

これだけなら一過性になってしまう可能性はまだ排除できません。今回の施策のさらなる手応えは、持続的な変化を阻害する思い込みが見えてきたことです。

チェンジリーダー候補者よりも、むしろマネジャーや部門長が足元の目標達成に縛られており、挑戦を進めようとしても「ブレーキとアクセルを同時に踏むような状態」になっている。だからこそマネジャーの評価の仕方や目標の持ち方にメスを入れるという次の打ち手が見つかりました。

またお客様経営層・幹部層の多くは当社に具体的な変革提案を求めているが、その事実がメンバーに共有されていなかったことで何をすべきか判断する材料がなかったことが分かりました。そこで目標設定、計画策定にあたり、挑戦に必要な情報は役職者でなくとも共有するようにコミュニケーションを変えました。

チェンジリーダー候補者たちが本気で動いたからこそ、その結果からありたい姿に向けて変えるべきことがはっきりしてきたという事例です。

それでは、本日のセミナーをまとめます。

グループ会社・子会社がお悩みになる背景には、前提条件や独自の事象が引き起こす組織のハードとソフトの分断、しかもこれらが断続的に起こり続けることにあります。そんな中メンバーの入れ替わりに左右されない強固な関係性づくり、親会社の方向性に左右されない基盤づくり、固定観念に左右されない良き体質を体現する人材ストックと、グループ会社・子会社固有の構造を前提に、それでも良い方向に変化し続ける切り口についてお伝えしました。「現状を変えたい」想いをお持ちの方にとって、本セミナーが関係者と本音で対話するきっかけになれば幸いです。

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